シップリサイクルへの取り組みapproach to ship recycle
シップリサイクルとは
解撤現場(パキスタン)海洋政策研究財団提供
船舶はその寿命を終えると、解体・解撤の後、主に建設用資材として、多くは発展途上国でリサイクルされます。この「船舶の解撤によるリサイクル」は、資源の再利用として非常に有効といわれる一方で、様々な問題点が指摘されてきました。
例えば、環境面においては、船舶内に存在する有害物質が解撤を目的(しばしば目的もあいまいなケースも多い)とした越境によって移動する事実が明らかになっています。 その有害物質に対する製造者責任、さらに解撤船舶の所有責任(越境管理)も問われています。
これらに加え、舶内に残存する燃料湯の流出による海洋汚染も懸念されます。また解撤には数々の危険な作業がつきものであるにも関わらず、作業者の安全対策が不徹底であることなど、解撤時の劣悪な労働環境も問題視されてきました。
こうした課題に対し、国際的な取り組みが存在することなく、あいまいな対処がなされてきた実情があります。そのため、安全および環境保全に配慮した船舶リサイクルが早急に望まれていました。これがシップリサイクルと呼ばれる国際的な取り組みへとつながっていったのです。
参考資料
日本財団 船舶解撤の新たな進展と今後の展望
日本財団 平成16年度海事の国際的動向に関する調査研究海洋汚染防止関係事業報告書
シップリサイクルの国際的なガイドライン策定について
上記の国際的な課題の解決に向け、国際海事機関(IMO)、国際環境計画(UNEP)、国際労働機関(ILO)が問題解決のため、それぞれの立場で検討を進めました。 現在は、IMOの主導により、安全および環境保全に配慮した船舶リサイクル(=シップリサイクル)を実現するために船舶の建造から運航、解撤(リサイクル)までの各段階における必要な措置を強制化(条約化)する方向で議論が議論が進み、2008年10月の第58回海洋環境保護委員会(MEPC58)において条約案は承認され、2009年5月15日に香港において「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(仮称)」(通称:シップリサイクル条約)として採択されました。我が国は、世界有数の造船・海運国としてこの問題を重視し、積極的に国際機関における議論に参加しています。 具体的には、シップリサイクル条約案として、以下のような措置内容について議論がなされています。
- 特定の有害物質について、船舶への使用を禁止又は制限すること
- 船舶のリサイクルの際に有害又は危険となりうる物質について、使用場所及び使用量を記載した一覧表(インベントリ)を作成して船舶に備え付けること。
- 一定の基準を満たしているとして認可された施設のみで船舶をリサイクルすること
- リサイクルの前に、タンク内等に残っている有害な液体や危険なガスを除去すること
(国土交通省 海事局HPより)
ヒエンでの取り組み
ヒエンでは、船舶用電線のトップメーカーとして、シップリサイクルの法令化をにらみ、早くからこの課題に積極的に取り組んでまいりました。
具体的には、RoHS指令にも指定されている特定有害物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEなど)を含まない船舶用電線の生産が挙げられます。 ヒエンは、有害物質の含有率を極限にまで下げることで、さらに地球環境・労働環境に貢献していきたいと考えています。そのための技術・製造に関わる研究開発をたゆまずに続けてきました。 さらに供給側チェック機能、分析体制、社内教育体制など社内のチェック体制を強化。
現行仕様の電線に含まれる有害物質の調査・分析を、サプライチェーンを遡ることも含め、行ってきました。現在では、希望があれば、インベントリ(有害物質一覧表)も開示しています。例え製造機密に触れることであっても、法令規定後は情報をキチンと適宣開示するための準備も着々と進めています。
ヒエンを大きく育んでくれた船舶産業における企業責任を果たすため、今後もますます環境対策に取り組んでいく所存です。
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